SOWACAFE DIARY

自家焙煎 真岡珈琲豆舎 ソワカフェ の日記

"I do not consider the sale complete until goods are worn out and costomer still satisfied."  - Leon Leonwood Bean 1916
「私は売れた商品がボロボロになるまで使われ、なおかつお客様がその時点で満足していることで物販は成立すると考える。」  - レオン・レオンウッド・ビーン (1916年)

 ■出店予定日時、場所は、ホームページに記載致しますのでご覧ください。→【こちら

珈琲溶液の可溶物濃度

■例によって、y_tambe氏のtwitterつぶやきを転載させてもらいます。
□今回は、コーヒーの可溶物濃度、要は、「コーヒー中の、水(H2O)以外の物質の量」についてです。
□y_tambe氏が言及されているように、工学的、例えばQC(品質保証)に屈折率計使うのって、安いし、早いし、簡便だし、1滴で測定できるし、、、よさそうですね〜。
□日々の実務において、珈琲豆の焙煎品質管理は光度計のL値で、コーヒー抽出液(要は飲むコーヒー)の品質管理は屈折率で、ってのが現実的な気がしています。まあ結局は官能試験は外せないんだろうけど、機器分析的手法での香味へのアプローチはたえまなく続けたいですね〜。
□でも、安くて操作が簡易で早い光度計ってあるのかなぁ???

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・成分組成が違えば、屈折率は変わる。単純な溶液系とは違う。同じ焙煎度であっても、抽出が変われば、組成もまた変わるんだし。あくまで工学的な「簡便法」と割り切って使わないと、いろいろと見誤る。
・…つかまぁ、アメリカあたりの「抽出理論」も、せいぜいその程度止まりなわけだし、イタリアのエスプレッソ屋さんたちの唱えてるのも正直、それほど大差ない。今いちばん注目が必要なのは、ドイツの研究者らがアプローチしつつあるドリップ抽出の解析。
・まあ「理学と工学の違い」という、捉え方の違いがあって、工学的アプローチがまったく意味がないかというと、もちろんそんなことはなく、むしろ実用性という面では優れてるのだけど…理論が置き去りになってしまうとツラい。
・一応、きっちりしとくか。コーヒー抽出液に対して屈折率計(リフタクトメーター)を用いて出てくる数値は、基本的には「可溶物濃度」とほぼ近似する。可溶物濃度/量の算出法としては、この他に乾燥重量から求める方法もあって、正確な数値が必要とされる場合は、後者を使う方が望ましいとされる。
・で、この「可溶物濃度」というのが、ちょっと曲者。非常に極端な例だけど、食塩水でも砂糖水でも、同じ「可溶物」という扱いでひとまとめにしてしまうのが、この数値の罠。また異なる溶質では、同じ濃度であっても屈折率に若干の違いが出てくる。
・だから厳密に言うなら、同じ「砂糖水」…ショ糖だけしか溶け込んでない水であれば、屈折率は濃度の指標として正確になる。けど、コーヒーのように多成分系であれば、屈折率と可溶物量にはずれが生じる。
・それから「砂糖と塩」の喩えから導けるように、「可溶物濃度」が全体で「同じ1%」だったとしても、砂糖と塩の比率によって、味はまったく異なってしまう…ただし、これらはあくまで「極端な」喩え。「ある程度までは」大体、ほどよい相関を示す。だから「工学的に」一つの目安に使える。
・例えば、簡易式の糖度計なんかも屈折率で調べるのだけど、それは「同じ果物」だったら、概ね、成分組成が似通ってるから。ただ、コーヒーの場合、それがどこまで通用するかというと、正直難しい部分が。
・特に、異なる焙煎度だと成分組成の変化がかなり大きい。総じて、同じ焙煎度のものを比較するのには、まぁそこそこ使えるはず…ただ例えばさらに、エスプレッソとドリップの比較も可能かとかいうと、それはそれでまた難しい。
・特に、V60とかにも繋がってる「日本のドリップ技術」ってのは「砂糖と塩の混ざった中から、できるだけ砂糖だけ多めに抽出する」ってのを実現するための技術として発展してきたもの。こういう発想は、他国にはほとんど見られない。
・そういう「成分組成そのものをコントロールする」というのが、技術として先に存在してるので、それを「砂糖+塩」合計みたいな「可溶物量」で推し量ろうとするのを見ると、ちょっと凹むのも事実だったり…まぁ、つってもそこまできっちり分離できるもんではないから、やっぱり指標にはなるのだけど。
・あとまぁ「濃度の印象」との乖離、で言ったら、そもそも色素成分の化学変化による違いもあって…このあたりは、中林先生が専門に研究してたところなので「コーヒー焙煎の化学と技術」に詳しい。あと石脇さんの「こつの科学」に少し触れられてたり、スペ大全のテイストチャートにも取り入れてる。
・基本的に、浅煎り→深煎りに向かう過程で生じてる色素は「色そのもの」が途中で変わっていく。黄褐色→赤褐色→黒褐色、と。中林先生はこれらを、この順に「褐色色素C、B、A」と呼んだ。平たくいうと、同じ「濃度」でも後者の方が「色」は濃い。
・焙煎豆や、それを粉砕した後で照度計で求める「L値」は、そういう意味では、生成した色素の組成をなかなかよく反映するので、焙煎度の指標としては比較的安定なのだけど……ただ、近年では焙煎時の温度プロファイルが異なれば、同じ生豆でL値が同じに煎っても香りに違いが生じることも報告されてる。
・…とまぁいろいろ考えていくと、工学的指標値というのは、どうしてもどっか官能検査の結果とずれてしまうところはある。ただ、あまり厳密性を追求せずに、一つの目安として用いるのならば、有効な活用法が出てくる。
・これはまぁ、例えば、大手が使ってるような「味覚センサー」でも実はあんまり事情が変わらんところもあるわけで…。
・味覚センサーなんかの場合は、もうちょっと「呈味成分」の定量(化学で言う「定量」には「定性」が当然のものとして含意される)に近い要素も含んでる。その分、もうちょっと「ずれの少ない指標」になってくれるのだけど…まぁ完全代替は不能。なのでやっぱり「官能検査」の重要性は保持される。
・sowacafe 乾燥重量から求める方法って、どうやるのでしょうか?加熱か減圧ぐらいしか思いつかないのですが、どちらも低分子量物などが揮発しちゃいそうに思えて、やったことなかったのです。
・「乾燥重量法」として、大体決まったプロトコル(例えば、日本薬局方とかで)に従って行われます。強力な脱水剤(五酸化リンなど)を入れた専用の器具で、減圧しながら加熱(60℃くらいまで)して完全乾燥させる
・もちろん、この方法だと揮発性物質は飛んでしまうけど、それは、この方法ではカウントしない。もし必要ならば、例えば精油抽出法なんかを使って別途回収するなり、GC-MSで個別に定量するなり、別の方法を使って計る必要がある。

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20111028013225
□このへん、低濃度用屈折度計、定価28000yenだそうな。ちょっと高価だけど、良いかも。
□濁度もおもしろいとおもうんだけどな〜(勘ですが。)とりあえずレーザーポインタで、なんかできるかな、、、